私の地元、大淀町の今木(いまき)に『甲(かぶと)神社』という名前の神社があります。
伝説によれば、この神社には蘇我入鹿の甲と鎧が祀られているそうなのですが…、どうして飛鳥から離れたこの場所にそのような伝説をもつ神社が建っているのでしょうか?
そして、実際に蘇我入鹿の甲と鎧を見ることはできるのでしょうか?
現地に行って確かめてみることにしました。
歴史・伝説
『甲神社』の歴史を調べてみましたが、創建についての詳しい情報は見つけることができませんでした。
祭神は大己貴命・月読命・素盞嗚命・保食命で、蘇我入鹿の甲と鎧が祀られている神社として知られています。
(ちなみに、大淀町のHPには「甲をまつっている」とだけ書かれており、鎧が祀られているという記述はありませんでした。)
以下、ネット上で見つけることができた他の情報の一部です。
入鹿大明神・甲之大明神とも
御神宝として蘇我入鹿の甲、鎧を祀っていると伝えられています。また、古くから入鹿大明神と称されて、住民に親しまれてきました。入鹿の命日である9月23日に、例祭で子供巫女舞が行われていましたが、現在は10月第2日曜日に開催されています。
なら記紀・万葉 名所図会 ―日本書紀・旅編― page 14/32
地区に残る江戸時代の資料には「甲之大明神」として登場している。
大淀町②〜甲(かぶと)神社〜 | ヤマトノココロの記録用 心の日記
…略…
地名からも推測出来るように、朝鮮半島からの渡来人「今来(いまき)」という技術者の集団が住んでいたのではないかと思われるとある。当初は「今木神」などがお祀りされていたのがいつの頃からか、国土を作った国つ神系の神々が祀られるように替わっていったのではないかといわれている。
秋祭り
ススキ提灯で心ひとつに 甲神社秋祭り
おおよど遺産(PDFデータ)p.91
今木地区の氏神・甲神社は、社伝によると飛鳥時代の大豪族・蘇我入鹿(そがのいるか)の甲をまつっているといいます。毎年10月に行なわれる甲神社の秋祭りは、前日の宵宮(よみや)から始まります。夜のとばりが下りる頃、太鼓の音とともに、明かりを灯した高さ約4m のススキ提灯が、地区の9つの垣内(かいと)から集い、社殿のまわりを囲みます。祭典後には、地元子ども会による巫女舞、太鼓演奏の奉納と続き、翌朝の本祭にむけてみんなが心を一つにします。
五位堂鋳物師
蘇我入鹿の鎧兜を祀った大淀町の甲神社に1855年、五位堂鋳物師が鉄湯釜をおさめています。
五位堂鋳物ファンクラブさんのポスト
蘇我入鹿を崇める
古くから「入鹿大明神」と称されて、地元の方に親しまれてきたとのことですが、祭神としてお祀りはされていないようで少し不思議な感じがしますね。
ちなみに、橿原市には全国で唯一蘇我入鹿がお祀りされている「入鹿神社」があります。
嫁入りに関しても面白い記述がありました。
入鹿神社のある橿原市小綱町では、多武峯方面への嫁入りが疎まれていたようです。多武峯は敵である鎌足が祀られている場所ですからね、分からなくもありません。同じ理由で、今木エリアから桜井市方面への嫁入りや婿入りは無かったと伝わります。
入鹿大明神!大淀町今木の甲神社 | 奈良の宿大正楼
それにしても、どうして飛鳥から離れた大淀の地に蘇我入鹿を崇める神社が建てられたのでしょうか?
このことについても調べてみましたが詳細は不明でした。(情報求む!!)
境内・周辺の様子
今木集落のメイン道路から少し細道を入ったところに『甲神社』があります。地図でしっかりと調べないと通り過ぎてしまうかもしれませんね。
写真で分かりづらいかもしれませんが、狛犬の奥に駐車スペースがあります↓(車が停まっているところ)
右奥にメイン道路の信号機が少しだけ見えています。
手水舎
「村中安全」と彫られた手水石。
写真を見て気づきましたが、よく見ると下部がくり抜かれており、蝋燭か線香が立てられるようになっていますね…
このタイプはあまり見たことがないかも?
「大淀町史」によれば、手水石には天保10年(1839)若連中とあるそうです。
拝殿
拝殿はシンプルな造りのものですね。屋根の形状からもそれほど古いものではなさそうです。
拝殿内の写真も撮ってみました。(斜めで見辛くてすみません;)
本殿・境内社
本殿は一間五尺(約151.5センチ)、春日造りの素木で屋根は桧皮葺に千木(ちぎ)鰹木(かつおぎ)が配されているとのこと。
御神体は三神像・甲・鎧だということですが、そうなると蘇我入鹿の甲と鎧は本殿の中に祀られているのでしょうか?
本殿左右には境内社があります。両末社とも素木春日造で、右側の春日神社には武甕槌命・経津主命・天児屋根命・姫大神が、左の伊勢神社には天照大神がお祀りされているそうです。創祀は不詳とのこと。
遥拝所
拝殿の斜め後ろ(本殿の隣)には立派な御神木があり、その根元付近に張られた注連縄の区画内に何やら木製の柱のようなものが立っていました。
今は読めなくなってしまっていますが、この木製の柱には「遥拝所(ようはいじょ)」と書かれていたようです。
ちなみに遥拝所とは、遠く離れた所から神仏などをはるかに拝むために設けられた場所のことなのですが、ここから一体どこに向かって何を拝んでいるのか?
調べてみましたが分かりませんでした。(情報求む!!パート2)
地図を確認してみると、蘇我入鹿の墓か?ともいわれている「菖蒲池古墳」の方角を向いているので、もしかすると飛鳥に眠る蘇我入鹿に祈りを捧げる場所なのかもしれませんね??
その他の写真
蘇我入鹿の甲と鎧は実在するのか?
現地に行っても蘇我入鹿の甲と鎧を見ることはできませんでしたが、実際に蘇我入鹿の甲と鎧は実在するのでしょうか?
もし本当に実在するとしたら物凄く貴重なものだと思うのですが、画像なども全く出回っていないようですので、見た目も含め詳細は不明です。
近所にお住まいの方に話を聞いてみたところ、「実際に見たという話は聞いたことがないなぁ」とのことでした。(残念;)
もし情報が入りましたら、こちらに追記したいと思います。
伝統行事
10月10日 | 宮座講 |
10月17日 | 甲神社秋祭り |
「甲神社」の情報
所在地:奈良県吉野郡大淀町今木 小字畑中367
祭神 :大己貴命・月読命・素盞嗚命・保食命
駐車場 :あり
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