『ジヲウ古墳（坂合黒彦皇子墓）』（大淀町）

2024年2月19日2024年2月22日

蘇我入鹿の甲と鎧が祀られていると伝わる「甲神社」から少し歩くと、国道309号線北側の山の中腹になにやら古墳らしきものを発見したので立ち寄ってみました。

坂合黒彦皇子とは？

坂合黒彦皇子は第19代允恭天皇と、皇后の忍坂大中姫（おしさかのおおなかつひめ）との間に生まれた5男4女のうち、3番目に生まれた皇子です。
同母兄弟に木梨軽皇子（きなしのかるのみこ）・安康天皇（第20代）・八釣白彦皇子（やつりのしろひこのみこ）・雄略天皇（第21代）がいます。

『日本書紀』雄略天皇紀によると、坂合黒彦皇子は、安康天皇3年8月に安康天皇を殺害した幼い眉輪王（まよわおう／安康天皇に殺された大草香皇子の子）をかばったため、大泊瀬皇子（後の雄略天皇）から同母兄弟の八釣白彦皇子と共に共犯者として疑われてしまいます。
八釣白彦皇子は雄略天皇に斬り殺され、同じく殺されそうになった坂合黒彦皇子は、眉輪王とともに葛城の円大臣（つぶらのおおおみ）の邸宅に逃げ込みました。
円大臣は贖罪として娘と私地を献上しようとしたがかなわず、雄略天皇は火を放って葛城円・眉輪王・坂合黒彦皇子を焼き殺してしまいます。
この時、坂合部連贄宿禰（さかあいべのむらじにへのすくね）が皇子の遺骸を抱いて焼き殺され、その舎人が回収にあたるも遺骨を選別できなかったため、1つの棺に入れて「新漢槻本南丘（いまきのあやのつきもとのみなみのおか）」に合葬した、とあります。

分かりやすいように【坂合黒彦皇子の関係図】を作ってみました↓

『古事記』安康天皇段では、安康天皇が目弱王（眉輪王）に殺されたことを知った大長谷王子（大泊瀬皇子／雄略天皇）が、黒日子王（坂合黒彦皇子）のところに行って天皇が殺されたことを告げたが、黒日子王は驚きもせず煮え切らない態度を示したため、大長谷王子は怒ってその場で黒日子王を斬殺した、とあります。

安康天皇を殺害した眉輪王をかばったため、彼に味方した円大臣や眉輪王とともに大泊瀬皇子（雄略天皇）に殺害されてしまった坂合黒彦皇子。
なんとも悲劇的なお話です。

奈良県御所市にある5世紀前半の豪族居館遺跡である極楽寺ヒビキ遺跡では、焼けた建物や塀が確認されており、この場所が雄略天皇に火を放たれた円大臣の館跡であるとする説もあります。

墳形・周辺の様子

それでは、坂合黒彦皇子が埋葬されていると伝わる『ジヲウ古墳（坂合黒彦皇子墓）』について見ていきましょう！

古墳は奈良県大淀町今木の国道309号線から、民家の脇にある細い道を進んで行った場所にあります。

階段を登った先に見えるのが『ジヲウ古墳』です。
墳形は直径14.8mの円墳とされていますが、宮内庁が管理している古墳のため、内部の様子や副葬品など詳しいことは分からないようです。

古墳について大淀町のHPには以下のように書かれていました。

『日本書紀』によると、坂合黒彦皇子は、允恭天皇（黒彦皇子の父）の後をついだ安康天皇を殺害した幼い眉輪王（まゆわおう）（安康天皇に殺された大草香皇子の子）をかばって、大泊瀬皇子（黒彦皇子の弟・後の雄略天皇）の怒りを買い、彼に味方した葛城の円大臣（つぶらのおおおみ）や眉輪王とともに殺され、「新漢槻本南丘」に合葬された、とあります。
現在宮内庁の管理する「坂合黒彦皇子墓」は、安政年間（1854-1859）に当町今木字ジヲウの地に比定されたものです。
これに対し『大和国古墳墓取調書』を書いた野淵龍潜は、これに意を反して、江戸時代に書かれた『大和志』の指摘どおり、「天狗森」と呼ばれている今木の南側の丘陵地に候補地を求めています。
この今木の地に伝わる黒彦皇子の御陵の伝承は、古代史の謎とあいまって深い霧につつまれたまま、当地に残されています。
引用元：坂合黒彦皇子墓 | 大淀町役場

宮内庁は「坂合黒彦皇子墓」を今木字ジヲウの地に比定していますが、実際は「天狗森」と呼ばれている今木の南側の丘陵地なのではないか？とする説もあるようですね。

ここからは写真をいくつか載せておきます。